「体が硬いから」「インナーマッスル不足」「筋膜が硬い」——よく言われる原因が、どこまで本当なのか。
「体が硬いから腰痛になる」「インナーマッスルが弱いからだ」「筋膜が硬いのが原因」——腰痛の原因としてよく語られる説明です。どれも一部は当たっていますが、それだけで説明できるものではありません。この章では、柔軟性と筋力について今わかっていることを整理します。
慢性腰痛の方を見ていると、体が硬い、動きが少ない、全身が緊張している、というケースは確かに非常に多くあります。近年の研究でも、慢性腰痛の方は腰だけでなく、股関節・胸椎(背中)・首・ハムストリングスなど身体全体の動きが低下している傾向が報告されています。
ただし、ここで重要な視点があります。多くの方は「硬いから痛い」と考えていますが、現在は「痛いから硬くなる」という考え方も非常に重視されています。
腰に痛みがあると、脳は体を守ろうとします。すると筋肉が緊張し、動きを減らし、無意識にかばうという反応が起こります。これが続くと、身体全体が固まりやすい状態になっていきます。慢性腰痛の方に、呼吸が浅い・肩に力が入る・歩幅が狭い・背中が動かないという人が多いのは、こうした防御反応も関係していると考えられています。
「開脚ストレッチを毎日続けているのに、股関節や腰の違和感が変わらない」。こうした方も多くいらっしゃいます。
結論から言うと、開脚できる=股関節が使えている、ではないからです。ストレッチで得られるのは受け身で広がる可動域ですが、日常生活で必要なのは自分で支えて動かす可動域です。
開脚ストレッチだけを続けていると「開くけれど使えない股関節」になります。すると体は足りない分を他で補おうとし、腰で代償する、膝で負担を受ける、という形になります。その結果、腰の張りが残る、股関節の違和感が消えない、という状態が続きます。
当院が見ているのは、単なる柔軟性ではなく「使える可動域があるか」です。ストレッチだけで終わらせず、動きの中で股関節を使えるようにするところまで行います。
腰痛の改善に筋トレが大事、という話をよく見かけます。そこで体幹トレーニング、スクワット、腹筋、プランクを始めてみる。でも翌日「腰が重い」「張っている」「悪化したかも」となって、やめてしまう——腰痛のある方にはかなり多いパターンです。
ここで起きているのは、筋肉痛なのか悪化なのか区別がつかないという問題です。腰痛を繰り返している方ほど身体の変化に敏感になります。そのため、本当は「筋肉を使った反応」でも、また痛めた?ヘルニア?悪化したかも、と不安になりやすいのです。
この不安が運動を止めさせ、活動量が落ち、さらに腰痛が長引く——という循環に入ってしまいます。だからこそ、最初から強い負荷でやらないことが何より大切です。「ちょっと物足りない」くらいから始めてください。
「腰痛はインナーマッスルが弱いからですよ」と言われたことはありませんか。インナーマッスルが腰を支える大切な筋肉であることは確かです。しかし最新の研究では、腰痛はインナーマッスルだけが原因ではないことが分かっています。
特定の筋肉を名指しして「ここが弱いから痛い」と決めつけると、そこだけを鍛える方向に進みます。それで変わる方もいますが、変わらない方も多くいます。原因が別のところにある場合、鍛えても負担のかかり方は変わらないからです。
筋膜は、筋肉を包み込む組織です。腰には胸腰筋膜(きょうようきんまく)という大きな筋膜があり、背中・お腹・お尻の筋肉をつなぎ、姿勢を保つ役割を担っています。
以前は「筋膜は筋肉を包むだけの膜」と考えられていましたが、現在では胸腰筋膜に痛みを感じる神経(自由神経終末)が多く存在することが分かっています。つまり筋膜は、単に包む膜ではなく痛みを感じ得る組織だということです。
実際、慢性腰痛の方を対象にした研究では、腰痛のない方と比べて胸腰筋膜の滑り(滑走性)が低下していると報告されています。
ただし、ここが肝心なところです。研究で分かっているのは「腰痛のある人は筋膜の動きが悪い傾向がある」ということまでで、筋膜が硬くなったから腰痛になったのか、腰痛によって動かなくなり結果として筋膜が硬くなったのかは、はっきりしていません。「筋膜が硬いから腰痛になる」と断言できるエビデンスは、現時点ではないのです。
現在の医学では、腰痛は一つの組織だけが原因ではなく、複数の要因が重なって起こると考えられています。
そのため「筋膜だけをほぐせば治る」「インナーマッスルだけ鍛えれば治る」とはなりません。同じ腰痛でも、朝だけ痛い人、座ると痛い人、歩くと楽になる人、前かがみで痛い人、反ると痛い人がいます。
腰痛の改善で見落とされやすいのが、腰から離れた場所です。特に足首と股関節は、腰への負担を大きく左右します。
足首が硬いと体重が前に進まず、股関節が硬いと前へ進む力が作れません。どちらも、その代わりを腰が引き受けることになります。太ももの裏(ハムストリングス)の硬さも同じで、骨盤の動きを制限し、腰の負担を増やす方向に働きます。
腰そのものをほぐしても戻ってしまう場合、原因はこうした「腰以外の場所」に残っていることが少なくありません。
ここまでお読みいただいてありがとうございます。ご自身の腰痛が何と関係しているのかは、実際に体を見せていただかないと分かりません。半田市の末広整体ラボでは、カウンセリングと検査で原因をたどったうえで施術を行っています。→ 腰痛の施術について詳しく見る
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